各地のNPOと自治体から

地域のNPOから~私たちがホームスタートをはじめた理由

ホームスタートの地域運営団体は、既に様々な子育て支援に取り組んできた団体が新規事業として始められるケースがほとんどです。なぜ、ホームスタートを始められたのか?その理由をお伺いしました。

子育てひろばの運営団体

ひろば事業に取り組む中でピアサポートの有効性は実感していましたが、ひろばに出て来られない親子や一度来られただけでその後来られなくなった親子のことが気になっていました。また、ひろばに来られている方からも、ここに来れるようになるまでが辛かったという話をよく耳にしていたので、私たちに訪問支援ができればという思いを抱くようになっていました。個別訪問支援が自分たちにできるのかという不安やためらいを感じている時に、ホームスタートを知ったんです。ホームスタートの質を担保するしくみを導入することで安全な家庭訪問支援ができる、と考え、訪問活動を始めました。使ってみると、なるほど!と思ういろいろな工夫が組み込まれているしくみですね。ホームビジターと一緒にひろばに来ることで、その後ご自身で来られるようになったり、拠点と訪問支援の組み合わせはとても有効だと感じています。

ファミリーサポート事業運営団体

ファミリーサポートは、お子さんを預かったり、お母さんの代わりにお子さんの送迎をしたりする活動で、地域の支え合い活動として長年取り組んできました。そんな中、急に利用がなくなった家庭があり心配で連絡をしてみたところ、家計が苦しくて利用料が払えないから使えなくなったと言われ、お母さん自身のつらい気持ちをお聞きする場面がありました。一方で、協力会員さんからも、お子さんを迎えに来られた時に玄関先でお母さんの話を長くきくことがあり、相談されることもでてきたんです。そんな従来事業の枠組みでは対応できないというジレンマを感じている時にホームスタートのことを知りました。まさに、これだ!と思い始めました。訪問支援した家庭がその後ファミリーサポートを利用されるようになったり、協力会員さんがホームビジターの活動を始められるなど、事業間の相性もとてもいいと感じています。

要支援要保護児童・家庭への支援に取り組む団体

養育支援訪問事業の中で家事育児ヘルパー派遣事業を実施する中で感じていたんですが、問題が大きくなってしまった家庭への支援はとても時間がかかりますし、支援をしていてもある意味現状を維持するのがやっとという状況が多くあります。もっと早くに支援ができていたらと感じたり、お母さん自身の家事育児力を高める支援方法があったらと感じていました。ホームスタートは、誰でも気軽に利用できる支援なので、問題が大きくなる前に支援できますし、お母さん自身が本当に元気になっていくことが実感できる支援だと実感しています。一緒に家事育児をすることで、自分でできるよろこびや自信がつくところもホームスタートならではだと思います。

「お互い様という地域のつながり」=「安心して子育てできる社会」

ホームスタートは、NPOと行政や地域の子育て支援機関との連携を深めながら地域の子育ち子育てをよりきめ細やかに支えていく活動です。
支援のすき間を埋めるホームスタートは、以下のように利用家庭の紹介を受けたり、訪問家庭が地域の他の子育て支援サービスを利用できるようにサポートすることでつなげてゆきます。

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保健師さん等の関係者の声

  • 「ソーシャル・キャピタル」とは、お互い様の関係づくりが地域の社会資源であるという「つながりを重視しながら地域力をつける」という考え方。ホームスタートは、様々なつながりが醸成されてゆく「まちづくり」の効果も期待できる活動です。
  • ビジターの訪問で母親が気持ちの切り替えができ、心のゆとりをもって子育てに向き合えるという変化が生まれている。母子共に健康度の底上げになることを実感しています。
  • 保健師の仕事とは違い、同じ親同士として家事や育児の方法を具体的に家庭の現場でサポートしてもらえるのがよい点。教える・教えられるという関係性でなく、母親自身が気づきつつ育児力が自然についてゆくよさがホームスタートにはありますね。

保健師さん等からよくある質問

保健師の皆さまからよくある質問をいくつかご紹介します。実際に地域で連携協力いただいている保健師さんの回答も盛り込んでいます。

Q:ファミリーサポート事業と何が違うのか?

ファミリーサポートでは「親の代わりに保育や送迎」が支援者の役割ですが、ホームスタートでは保育や家事育児の代行はせず、「親自身に寄り添いエンパワメントすること」が目的です。親子と一緒に過ごしながら支援するため、親の育児力の向上や子育て意欲の向上に役立ちます。

Q:ボランティアで大丈夫なのか?

「住民参加型の安心安全な活動を実現する包括的なしくみ」がホームスタートにはあります。ホームスタートでできることは限られているので、保健師のサポートが必要と気付いた時に早めに連携できるよう、その意思疎通を図ることが大切です。また、緊急時の対応についても事前に共有確認をしておくことで、リスクマネジメントが可能となります。(保健師)

Q:どのようにご本人に支援の存在を周知できるのか?

~自治体の母子保健業務との連携による効果的な情報提供~
・母子手帳交付時にチラシ配布
・出産後や乳幼児家庭へ情報提供
・4ケ月健診時に説明相談デスクを設置、説明会を開催 
・関係機関でのチラシやポスターの設置
その他、病院やスーパー等、乳幼児家庭と接点のある民間施設の協力も得て各地で周知しています。

Q:ホームスタートの支援で具体的にどのような変化が親子に生まれるのか?

~気持ちの切り替えができて、心のゆとりをもって子育てに向き合える、そういう変化が生まれます~
家事育児の協働により
●母親の自己肯定感の向上
●情緒の安定
●自信の向上
●ひろばなどへ出かけられるようになる
●子育てスキルの向上
などの変化が確認されました。(保健師)
その他、具体的な変化は以下の点です。

<母親自身の気づきと気持ちの変化>

・自分の思いや不安をきいてもらえることで気持ちが楽になった
・子どもがビジターさんと遊んでいる姿を見て、うちの子こんなこともできるんだと気づき、子育てのよろこびを少しずつ感じられるようになっていった。
・ビジターさんのちょっとした生活の工夫を目の前で見れて、家事に集中できないイライラが解消できた。イライラは子どものせいだと思っていただが、無駄に子どもを怒らなくてもいいことに気付けた。
・誰にも頼りたくない、でもどうしていいかわからないという気持ちがあったが、困った時には頼ってもいいんだ、という安心感を得られた。
・支援機関とつながり、相談してもいいと思えるようになった。

<生活の変化>

・生活のリズムが乱れていたが、週1回の訪問に準備をするようになりリズムが戻るようになった。
・家族の協力も得られるようになった。
・保健師への電話相談が減り、育児スキルが向上し相談の内容が変わった(保健師)

<その他の声>

・家に子どもと二人っきりでいた時に、自分の話しをじっくりきいてもらえたことがよかった。・自分の体調のことなどを心配してもらったり、がんばりを認めてもらえてうれしかった。
・自分のために来てくれるスペシャルな時間があることがよかった。
・身近なまちの子育ての情報を知れてよかった。
・家事や育児の方法を具体的に一緒にやりながら話ができてよかった。