岩手・宮城・福島での訪問支援体制づくり

新しい支え合い子育て支援の芽を東北に

HS地域スキーム

訪問支援を始めるには、そのための人材育成が必要となります。また、安心安全で効果の高い訪問活動を続けてゆくためには、ボランティアを支える人材の育成と組織体制づくりが欠かせません。新しい訪問支援の体制が東北の地に芽吹き育ってゆくためには、種を埋める前の土壌づくりのような下地作りが重要になります。

実際に訪問支援が始まるまでの流れやおよそ要する期間は以下のようになっています。1つ1つのステップを関係者と一緒に進んでゆくことが後々の安定した訪問活動のために大切なため、一定の時間を要します。


訪問支援が始まるまでの流れ・支援活動内容

訪問支援が始まるまでの流れ・支援活動内容

①ホームスタートのしくみを知る機会づくり

まずは、ホームスタートの訪問支援の方法を多くの方々に知っていただくことから始まります。ホームスタートの訪問支援の意義や役割は何か、どのような仕組みで実施するにはどうすればよいかなど、子育て支援関係者の方々向けの普及講演会を各地で実施し、436人の子育て支援関係者、自治体関係者にご参加いただきました。

福島会津若松での普及講演会
福島会津若松での普及講演会
グループワークで1つ1つの疑問を解消
グループワークで1つ1つの疑問を解消

②組織化援助訪問コンサルテーション

団体として新たな訪問事業を始めるかどうかを決断するための情報提供や体制作りのためのアドバイスを現地を訪問して行います。地域の状況や関係者のニーズに応じてのべ273回の訪問コンサルテーションを3県で提供し、現在では、雫石町、仙台市、名取市、福島市、いわき市、会津若松市、白河市、喜多方市、二本松市、本宮市、猪苗代町、会津坂下町、会津美里町の13地域で訪問支援の体制が立ちあがりました。具体的な実施計画を立てながら、本協働事業のために設立された「まちくるみ育児ファンド」への助成申請手続きも一緒に進めています。

また、住民による新しい訪問型子育て支援を安定的に行っていくためには、地域の関連機関(保健センター、子育て支援センター、民生児童委員他)との協力関係づくりが重要になります。こうした環境づくりを立上げ準備の段階から地域団体の皆さんと一緒に行っていきます。

③「訪問支援の要」オーガナイザー養成コースの開催

専門家でもない地域の子育て経験者が訪問支援に安心安全に携わってゆけるのは、「利用者を守り、ボランティアを守る」オーガナイザーがいるからです。ホームスタート活動の要となるオーガナイザーさんが、きちんと訪問支援のしくみを理解することから地域での訪問支援活動は始まります。2011年6月、9月、2012年6月、2013年1月、6月、12月の養成コースで13地域から28名のオーガナイザーが岩手・宮城・福島に誕生しました。また、オーガナイザーを支えるトラスティー(運営委員会メンバー)8名も一緒に参加いただき、訪問支援のしくみについての理解を深めていただきました。

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ロールプレーによる体験演習 
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2013年 福島県郡山市でのオーガナイザー
養成コース

●参加オーガナイザーの感想

「養成講座ではプログラムやツールがあり、訪問支援ではシートに添って進めていくことができることに安心感があります。これからいろんな場面に遭遇すると思いますが、ホームスタートの3つの理念、8つの原則、5つの倫理の基本を忘れずに、一人ひとりのお母さんに安心できるサポートを届けて行きたいと思います。」

「ボランティアのビジターさんは、とても大切な仲間であり、宝物。最初の講座は緊張すると思いますが、新しい出会いを大切にしながら進めていきたいと感じました。」

「これから訪問支援を始めるのは、本当にドキドキします。でも、東北にいるオーガナイザー同士のつながりや、ホームスタート・ジャパンのサポートに心強く思います。」

「研修は演習やグループワークなど実践と結び付く参加・思考・交流型のもので、被災者支援についての講義もあり、大震災被災地のスキームとして準備始動するにあたり全てが参考になりました。」

④ホームビジター養成講座の開催サポート

ホームビジターはのべ40時間の養成講座を修了した地域の子育て経験者です。新たに訪問支援を始めるために、各地でオーガナイザー自身が共通シラバスやマニュアルを基にホームビジター養成講座をまず企画運営してゆきます。募集チラシの作成や講師の依頼といった準備段階から、のべ8日間の講座実施中まで、様々な助言やツール提供のサポートを行っています。

岩手・宮城・福島では、2013年2月現在までに116名のホームビジターが誕生し、のべ59名のコンサルスタッフが養成に携わってきました。

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ホームビジター養成講座
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ホームビジター養成講座7日目・修了式「おめでとう!」そして「ありがとう!」

●参加ホームビジターの声

「誰かの役に立てたらと思って参加しましたが、自分の子育てや自分自身のことを振り返ることができ、多くの気づきを得られる講座で自分のためになる講座でした。」

「実際の訪問がちゃんとできるかドキドキ不安な気持ちもありますが、寄り添う気持ちを大切にこれからの活動を始めたいと思います。」
「私の子育て経験で今の若いお母さんたちや子供たちの役に立てたら、と思っています。どんな出会いがあるんだろうとワクワクする反面、緊張感もあります。」

⑤利用家庭の募集・周知活動のサポート

誰かの手助けを必要としている子育て家庭に支援を届けるためには、まず、ホームスタートという訪問支援が地域で始まり利用できることをお知らせすることが必要となります。ひきこもりがちになったり、孤立しがちなママパパに支援の情報を届けるためには、様々な工夫をしなくてはなりません。親子との接点が多い母子保健や子育て支援に関わる公的機関、暮らしに関わる民間施設や団体などに広く協力いただきながら、周知を図ってゆきます。地域説明会や子育てフォーラムには2,804人が参加され、イオン店頭でのPRでは、8,800名の地域の皆さまにPRをさせていただきました。

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イオン郡山フェスタ店でのPR活動
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子育ての話をしながら
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ふくしま子育てフォーラムの
開催・398名の親子が参加
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民生委員さん、保健師さん等への説明会
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チラシ、ポスターの作成

⑥フレンドリーで質の高い訪問活動

ホームスタートの訪問支援は多様な家庭に届けられます。一人一人のママパパの気持ちにゆったりと寄り添い話に耳を傾けることで、ママパパ自身の気持ちが軽くなり、子育てにも前向きな気持ちが持てるようになってゆきます。各家庭への訪問支援は、オーガナイザーとホームビジターのペアで約2ケ月間二人三脚で行われ、オーガナイザーがホームビジターをしっかりとサポートしスーパーバイズします。

2011~12年に始まった4地域では、52家庭206人に302回支援が届けられるようになりました。そして、2013年6月以降に本格始動した9地域では2014年1月から訪問支援が始まり、支援の輪が広がりだします。

⑦スキルアップ研修の開催

2つと同じ家庭はなく、支援の内容も様々なため、オーガナイザーやホームビジターのスキルの向上は欠かせません。オーガナイザーは支援の要であり、訪問ケースマネジメント力、ホームビジターのフォロアップ力、地域連携力等が求められます。よりよい支援を継続的に提供してゆけるように、オーガナイザーの力量を高める研修を開催し、相互の交流を深めながら学び合える環境づくりにも取り組んでいます。

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先輩オーガナイザーから学ぶ機会 
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同じ立場同士で課題を整理
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各地の子育て状況と活動報告を共有 
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家族のニーズを大切にし、適切な対応をするために

ホームビジターのスキルアップ研修も各地で随時行われていますが、年に1度県域での交流研修会も開催しています。活動を通じて知り合える喜びとこれからの活動に向けたモチベーションアップが得られる機会としてボランティアの皆さんに提供されています。

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福島県内のホームビジター大集合!

⑧ネットワーク活動の推進

各地域団体同士の県域や東北エリアでのネットワークを推進することで、地域特性に応じた支援の質の向上と普及の推進が図られます。福島では福島ホームスタート推進協議会が、東北エリアではホームスタート東北エリア協議会が設立され、地元力のアップにつながっています。

⑨個別相談と継続支援コンサルテーション

訪問活動や運営に関する様々な個別相談サポートのために、のべ154回の現地訪問の他、ツールや情報提供などの相談コンサルテーションを継続的に行っています。利用家庭の掘り起こし、行政との連携推進、持続可能な活動のための組織体制づくりなど、個々の団体の強みと地域特性に着目しながら必要なサポートを提供しています。

⑩調査研究

全地域の日々の活動データを入力するホームスタート専用のデータベースプログラムがあります。各地で活動記録を管理するために利用する他、ニーズ充足度の集計や利用状況の情報を分析し、各地にフィードバックしています。この他にも、岩手県立大学の先生の協力を得て、被災地での子育て状況やニーズを理解するための調査研究活動にも取り組んでいます。