活動報告

外国にルーツがある子育て家庭の孤立防止のための支援者養成事業レポート

ホームスタート・ジャパンでは、2021年11月~2022年9月に、「赤い羽根 新型コロナ感染下の福祉活動応援全国キャンペーン・外国にルーツがある人々への支援活動応援助成」をいただき、外国にルーツがある子育て家庭の孤立防止のための支援者養成事業に取り組みました。皆さまからのご寄付・ご助成に心より御礼申しあげます。

この事業では、国籍に関わらず、すべての子どもたちが地域で見守られながら成長することができる社会づくりを目指し、子育て支援者向けの外国人家庭支援講座を開発実施し、インストラクターを養成しました。また、日本における難民の子育て支援をすすめるために、日本と諸外国での難民支援の現状について学ぶシンポジウムを開催しました。
そのレポートをお届けします!

 

外国人家庭の子育て支援講座の開発・教材開発・インストラクター養成・講座の試行

ホームスタートの活動が始まってから10年余りが過ぎ、多様な乳幼児家庭に支援が届けられています。外国人家庭の利用も年々増えており、言葉の壁を乗り越えるために、様々な工夫をしながら訪問を重ねてきました。その経験を広く子育て支援者や国際交流活動の関係者と共有し、日本語を母国語としない親子に寄り添うためのポイントや、言葉の壁を超えるために役立つ「やさしい日本語」について、共に学ぶ講座を開発することとしました。

インストラクターとしてプロジェクトチームに参加したメンバーは10名。
福島・茨城・埼玉・東京・愛知・滋賀・大阪で家庭訪問子育て支援に取り組む中、外国人家庭に寄り添う支援をもっと届けてゆきたい!という思いから、参加したメンバーです。

まずは、日本で子育てをしている外国人のママたちに話を聞いたり、外国人妊産婦支援にとり組む団体さんと情報交換をしたり、保育園での対応状況についてヒアリングをしながら、自分たちの支援経験をふり返りつつ、外国人の子育て支援のポイントについて改めて整理をしてみました。
2~4月には、麗澤大学の井上先生にご協力いただき、やさしい日本語についての初歩講座も実施できるよう5回トレーニングを受け、インストラクターの養成を始めました。
講座のプログラムは、改良に改良を重ねながら、最終的に、第一部「日本で子育てする外国人家庭の困りごとと支援のポイント」、第二部「やさしい日本語でのコミュニケーション」で構成し、参加者用のワークブックも作成することになりました。
 

 

8~9月には、いよいよ講座の初実施へ。各回を2~3名のインストラクターが担当し、計5回開催しました。当初4回開催だったのですが、すぐに定員@50名を超えてしまい、急きょ、開催を増やすことになりました。インストラクターのメンバーも緊張しながらの講座でしたが、多方面の方々からご参加いただき、お互いの経験を共有することで、とても学び多い時間になりました。以下が、参加者の皆さんのアンケート結果です。

 

 

講座参加者アンケート・153名回答

本講座は、あなたの活動・業務に役立つ内容でしたか?

    とても役立つ 91.5%(140名)、少し役立つ 8.5%(13名)

印象的だったこと、役に立つと思う事は何でしたか?(抜粋)

  • 印象に残った点は、「主体性を大切にした対等な関係」であることが大切だ、という点。「支援」は全面に出さず、「地域でいっしょに子育てをする仲間」として「尊重」することが大切だ、という点。
  • 自分の「当たり前」は今までの教育、習慣などによるもので、他人、特に異国の方々には通用しないことを再認識できた。お互いを尊重しながら暮らしやすい生活スタイルの提案を工夫していきたいと思った。
  • ワークブックに、ウェブサイト、アプリなどの情報が網羅されていて、今後の活動で必要になったときにこの一冊を見ればいい、というのはとてもありがたいなと思いました。これだけのサイトを調べて、自分でやるのはすごく時間と労力がかかりますので。
  • 日本語教師で子育て中の学習者もいて、子育ての悩みはよく聞きます。外国人にも対応してくださっているので、これから彼女たちが困ったときはこの活動を紹介します。
  • 看護の現場でも互いに歩み寄り、対象者の文化を尊重したかかわりができるよう努力したいと思いました。また、「つなぐ」ために、多職種連携、協働、パートナーシップをしていきたいと思いました。
  • 寄り添って一緒に子育てすることがとても大切なことだとわかりました。そのためにいかにやさしい日本語にしてコミュニケーションをとれるようにしていくか意識していきたいと思います。
  • やさしい日本語に置き換えるのは、演習でやってみて改めて難しさを感じた。そのことから、異国の地での暮らしの大変さも想像ができ、やさしい気持ちにもなれる。日ごろから意識していくといいのかなと思った。
  • やさしい日本語に正解はない。相手に「わかりますか…」という問いかけをしながらより分かりやすいことばを模索することが寄り添いになることを学びました。
  • やさしい日本語の言いかえは演習があってよかったです。演習がないと、聞いて、なるほどー、で終わってしまうことが、やってみたら想像以上に難しいことを痛感しました。5つのポイントにまとめられていて大変わかりやすかったです。

 
今回の講座開発・インストラター養成を通じて、地域のつながりで子育てを支えることの大切さや、地域で共に暮らす多様な人たちが支え合える地域共生のまちづくりが多文化共生と重なることなど、ホームスタートの活動で目指している原点を改めて心に刻むことができました。
 
 

移民難民の子育て支援に関するシンポジウムの開催

本事業では、当初から、日本の難民支援の現状と海外のホームスタートにおける移民難民支援の現状について学ぶシンポジウムを企画していましたが、2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、くしくも難民支援への関心が日本でも高まってきました。
隣国ポーランドでは、ホームスタートの国際ネットワーク組織のメンバーでもあるエンパワリング・チルドレン財団がウクライナ避難民支援をすばやく始め、私たちも募金活動を通じて応援することになりました。

6月25日のオンライン・シンポジウムでは、以下の3団体の方々のお話を約130名の参加者とともに伺い、学びました。
 
1)「難民とともに、よりよい社会をつくるために」認定NPO法人難民支援協会
2)ポーランドからウクライナ避難民支援レポート」エンパワリング・チルドレン財団
3)Home-Start UKでの移民・難民の子育て支援について」ホームスタート・エルブリッジ
 


 

難民支援協会代表理事石川様からは、日本の難民の受入れ状況や難民親子が直面する生活上の困難についてお話があり、ポーランドからは、ウクライナでの戦争により、子どもの保護が危機に直面している実態や保護者への支援状況について報告がありました。また、50年の歴史があるイギリスのホームスタートからは、貧困家庭へのアウトリーチ支援、アフガニスタン難民への支援について事例報告がありました。生活様式や家族の役割等についての文化的な違いや、健康に対する考え方の違いなどに直面しながら、トラウマに関する理解も深めつつ、ゆっくりと、そして、少しずつ、難民の親子に寄り添いながら伴走する現場のお話を聞く事ができました。

参加者は、子育て支援者、行政関係者、国際交流・多文化共生関係者、母子保健・医療関係者、有識者、メディア、ボランティア等と幅広く、以下のような感想が届いています。
 

参加者アンケート

本日のシンポジウムの満足度についてお伺いします。

    大変満足 55.8%(24名)、満足41.9%(18名)、少し不満2.3%(1名)

感想の抜粋

  • ウクライナ隣国のポーランドの子どもの権利を守ることを厳守した様々な取り組みを知ることができて参加して良かったです。また、イギリスの多様な文化圏からの難民支援を具体的に知ることができて、イギリスの難民支援の歴史とともに、ホームスタートの活動が活かされていることを実感しました。
  • 子ども達の状況はもちろんですが、外国での生活での母親の重圧が想像以上でした。母親の心身の安定が子ども達の平穏に繋がると思うと、サポートされている方々のご尽力に感謝しかありません。いろいろ考えさせられました。
  • 日本とは桁違いな人数の方々を受け入れ、共に生きようとされているポーランドの方々、イギリスの方々のお話を伺い、胸打たれました。同時に、日本での国としての支援の状況にショックを覚えました。難民申請をすることがそんなにも大変で時間がかかり、認定される方の少ないこと、思いもよらなかったです。
  • 支援においては異文化を理解して固定観念を取り除き、柔軟に対応していくことが必要であり、トレーニングによってボランティア自身も成長できることが持続的な支援につながる一つであるということが印象に残りました。
  • 海外でも日本でも同じように子育てを応援している私達。個々の違いを尊重し、そのことを理解する、知ろうとする努力が大切だと、あらためて感じました。ボランティアの方々と一緒に学び、モチベーションアップにつなげていることも、大変刺激的でした。
    私達も、もっと多様な可能性がある!と力をもらいました。ありがとうございました。

 

事業を終えて

子育て支援と外国人支援、双方に関わる人材は、まだまだ地域に少ない現状です。
これからも、外国人家庭の子育て支援講座を通じて支援者同士の新たなつながりをつくりながら、日本で暮らす外国人家庭の子育ても地域で支え合えるまちづくりを進めていきたいと思います。
これからも応援よろしくお願いします!!

追伸:外国人家庭の子育て支援の普及のために、利用案内や資料の多言語化が必要な状況です。ホームスタート・ジャパンでは、翻訳のご協力を頂ける方を募集しています!!