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9月20日、東京都北区の公共施設「北とぴあ」で、8月末に公開した2024年度版の年次報告書からのご報告と、短編映画『母娘』を上映するイベントを開催しました。
会場とオンラインで、約150人の方にご参加いただき、ありがとうございました!
会場は、プラネタリウムにも使われているホールです。座席もスクリーンも円形に作られていて、ちょっと特別な感じです。
イベントは認定NPO法人ホームスタート・ジャパン代表の森田圭子の挨拶から始まり、早速、映画を企画制作した西坂來人(にしざか・らいと)監督が登壇しました。
映像作家・絵本作家として活動している西坂監督。児童養護施設出身で、自分と似た難しい環境で育った若者の支援に10年あまり取り組んでいます。支援を続けていると、若者は親になっていきますが、そこでも難しさを感じることが多く、もやもやしていた時に、この映画の企画と出会い、ぜひ作りたいということになったそうです。
映画が完成した後、ホームスタートのように親子を支える活動を応援することができればということで、この日の上映会につながりました。
10分ほどの短編映画に凝縮された思いはとても伝わってくるものがあるので、ぜひ機会を見つけてみなさんにもご覧いただきたいと思いますが、簡単に紹介させていただきます。
主人公は、シングルマザーの娘として複雑な思いも持ちながら育ち、大人になった今も母親との関係がぎこちない状態が続いている女性です。
ある日、母になった友人とその娘の気持ちがすれ違っているその場に直面し、思わず身体が動きます・・・。
親子の側に、誰かが寄り添う、その意味。まさにホームスタートが大事にしていることがスクリーンから胸に迫ってきます。
上映が終わり、会場の照明が灯され、西坂監督と森田代表に、主演女優の細谷枝里佳(ほそや・えりか)さんなどが加わって、トークが始まりました。
「私もいつか子育てしたい、母親になりたい」ということを考えた時に、たぶん自分のお母さんは「いろいろなストレスとか大変な思いをしていたんだろうな」とすごく思ったところから、この映画の企画が生まれたそうです。
「お母さんが娘にガミガミ言ってしまうのは、お母さんが100%悪いわけではなくて、例えば、孤立して子育てをしていることによってストレスが溜まって余裕がなくなってしまうとか、仕事に行ってて仕事でも余裕がないとか、そういうところに原因があって、今のこの日本の社会の現状をどうにかしなきゃいけない」
そんな思いから映画の企画が固まっていったということで、ホームスタートの活動と根っこのところは同じですね。
そして、西坂監督からは、映像作家としてふだんはコメディを撮影したりもしているが、この映画では「リアリティにこだわった。本当に見てる人がリアルに感じないと、意味がない」という話が印象に残りました。
例えば、お母さんが洗濯物を取り込んだ時に、娘のよそ行きの服が破れているのに気が付くシーンがあるのですが、ついイラっとして娘に語気荒く当たってしまうところなど、会場のお客さんたちも「あるある」とうなづいていました。
続いて話したのは、山本昌子(やまもと・まさこ)さん。4歳の時に乳児院に預けられて育ち、社会的養護出身の若者たちを支援する活動を続けています。西坂監督などと一緒にその活動を発信するYouTubeチャンネルを運営し、この映画の制作にも協力しました。
山本さんは、母親になった若者たちを支援する中で「親子まるごとの支援」の必要性を強く感じる一方で、自分ができることの限界も感じていた時に、ホームスタートのことを知ったそうです。
それ以来、森田代表へのインタビュー番組をYouTubeで公開したり、昨年の15周年記念イベントの際に登壇するなど、ホームスタートを応援してくれています。
上映会の後は、8月末から配布・公開している2024年度の年次報告書を元に、ホームスタートの活動報告です。
山田幸恵事務局長が、昨年の利用家庭は3,000家庭を超え、登録ボランティアが約4,000人、新しい地域でも次々とホームスタートの活動が立ち上がっていること、そして、多様な家庭のさまざまなニーズに対応していることなどを紹介しました。
そして、実際にホームスタートを利用した2組の親子が登壇してくれました。
1人目はキャリーさん。夫の仕事の関係で東京に引っ越し、日本で暮らすのは2年になります。
周りに頼れる人がまったくいない状況で出産することになり、出産前と、生まれてからの2回、ホームスタートを利用しました。
「赤ちゃんが生まれて、とても嬉しかったですが、毎日がギリギリで、本当に大変でした。私は外国人のお母さんで、日本には夫しかいません。身近に子育ての話ができる人がいなくて、すごくさびしかったです。でも、ボランティアさんのおかげで、『ひとりじゃない』と感じられて、本当に安心しました。日本の社会の温かさを知ることができました。知らない人でも助けてくれる、その気持ちがとても嬉しかったです。そして、時間は短かったですが、「桜」のように短いけれど華やかで、心に残る経験になりました。私の人生に春の光をくれたと思います」
そして、パパも子どもと一緒に壇上へ。
「私は母子家庭で育ち、ずっと母と共に暮らしてきました。父親になると分かったとき、父親として何をすべきかまったく分からず、妊娠中の妻や生まれたばかりの息子を前にしてどうすればよいか分からず戸惑いました。2人が何を必要としているのかも理解できず、しかも身近に相談できる人もいないため、深い迷いと不安を感じていました」
「私が途方に暮れていたときに家に来てくださり、たくさんの助言をしてくださったおかげで、不安が大きく和らぎました。新しい国に来て、これほどまでに支えていただけるとは思ってもおらず、無力さを感じるどころか、むしろ温かさに包まれるようでした」
2人目は、埼玉県に住むYさん。長男が1歳8ヶ月の時に、次男が生まれました。
「最初は、2時間のサポートで何か変わるのかな?と思っていたのですが、本当に毎週待ち遠しくて、早くボランティアさん来てくれないかなという感じになっていました」
「人の手があることで、物理的な進みが良くなるのは当たり前なんですけれども、それ以上に、お話を聞いてもらって共感していただいて、メンタルケアもしていただいたのかなと今では思っています」
「当時は、赤ちゃん2人を抱えているような育児にどう向き合っていけばいいのか、目まぐるしい日々に追われて余裕もなく過ごしていたんですけれども、4~5ヶ月した頃には首も座り、子どもたちも成長してリズムもつかめてきて、あとは自分自身が2児の親として少し成長していたのかなと思います」
さらに、2人のホームビジターの方が登壇。大分県でボランティアを11年続けていて、たまたま東京にいらっしゃるタイミングだったのでお越しいただいた方と、東京都内で活動中の方です。
おふたりとも、「孫が増えたような楽しい時間」「人助けのつもりが、自分を助けている」など、活動を楽しんでいる様子が伝わってきました。
最後は、ホームスタート・ジャパンの森田代表から、お礼のご挨拶。
ホームスタート・ジャパンは、今年、認定NPOになることができたことを伝え、今後も活動を全国に広げていくためのご支援をお願いしてイベントを締めくくりました。
◆短編映画「母娘」の公式サイト
https://littleoneproject.wixsite.com/oyako-1
映画の上映予定などは、西坂監督がSNSなどで発信しています。
https://www.facebook.com/raitonishizaka
◆登壇した西坂さん、山本さんなどが運営・発信しているYouTubeチャンネル
THREE FLAGS -希望の狼煙-
https://www.youtube.com/channel/UCcfuoC8l6QPvK2cqLCQ0_JQ
この中に、ホームスタート・ジャパン森田代表がインタビューしていただいた動画もあります。
https://youtu.be/PL4OVW8CBAg
■ホームスタート・ジャパンの最新の年次報告書
https://www.homestartjapan.org/data/media/posts/202509/HSJ_Annual_Report_2024.pdf
■マンスリーサポーターなどで応援をお願いします
https://congrant.com/project/hsj/7272/form/step1
※その都度のご寄付や、金額、決済方法などは、ご自由に選んでいただけます。
※認定NPOになりましたので、寄付金控除(税制優遇)があります。