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5月30日(金)と31日(土)の2日間にわたって、全国各地でホームスタートの活動を推進するオーガナイザー(訪問事業統括スタッフ)等が、都内会場に約100人、オンラインで約70人集い、開催しました。
これからも、より多くの親子にホームスタートを届けるために、研修は第1部から第5部まで多角的なテーマで共に学び、充実した2日間になりました。
31日には、認定NPO法人として初めての総会も無事終了しました。
ホームスタートは、だれにでも身近で気軽に頼れる存在として、地域の非営利民間組織が運営していますが、妊娠期から乳児期にかけての利用が多く、赤ちゃん訪問や乳幼児健診の際に保健師さんから紹介してもらったというキッカケが非常に多いことがわかっています。
第一部では、石川県で活動するオーガナイザーが司会を務め、北海道・福島・山梨での実践例を通じて、どのようにホームスタートと保健師との連携が深まり、お互いの信頼関係が積み重ねられてきたのか、そのポイントを深堀しました。
理事のひとりで、看護学が専門の高城智圭・同志社女子大学教授は、保健師さんへのインタビュー調査の内容について言及し、ホームスタートと保健師の「顔が見える関係づくり」が、「すべての子どもたちの健やかな発育発達を支える環境づくり」につながる点を強調しました。
第二部は、ママ・パパからの問合せや申し込みをオンライン・ツールで受けるための研修です。
イギリスで50年前に始まったホームスタートは、申込書など長らく紙ベースでマネジメントをしてきました。今では買い物もスマホが主流となり、オンラインツール活用の必要性が年々増してきています。ホームスタート・ジャパンでは、昨年からオンラインフォーム版を開発し、一部地域での試用を重ねてきました。その結果や留意点などを共有し、個人情報の管理に関する留意点や具体的なツールの使い方を学びました。
試行した地域では、オンラインフォームの導入で申し込みから訪問までにかかる時間がかなり短縮でき、利用者にとっても運営団体側にとってもメリットが大きい点が確認できたため、今後、それぞれの地域団体の運営状況に応じて導入を進めていく方針です。
年に一度、全国各地からオーガナイザーが集まり、久しぶりに顔を合わせてたっぷり話せる貴重な機会。
「パパへの支援」「障害のある親への支援」「ホームビジター(ボランティア)さんのやりがい」「より伝わる広報」など、それぞれの関心テーマごとにテーブルを囲み、話に花を咲かせます。そこで出てきた事例やアイデアを模造紙に書きこみ、みんなで共有しました。
2日目の朝のテーマは、産前から学齢期までの切れ目ない支援でした。
ホームスタートは乳幼児のいる家庭が基本対象ですが、初めてのお子さんを妊娠中の初産婦さんからの訪問希望に応えるために、2015年から産前産後の訪問のためのプログラム開発に着手しました。妊娠期からつながることで出産後の大変な時期にすぐに訪問を始めることができる良さがあり、専門職ではなくても安心安全に訪問するための追加研修プログラムも作り、知見を蓄積してきました。現在では、約8割の地域団体で対応できるようになっています。
一方で、ママの悩みが小学生の上のお子さんについてのケースや、かつて訪問したご家庭から入学後に再利用を希望されるケースがあり、2020年からは学齢期でのホームスタートの支援を検討し始めることになりました。昨年までに10地域で試行し、自治体からも、ホームスタートが学齢期も対応できることへの期待の声が寄せられています。
理事の野田敦史・高崎健康福祉大学教授は、国が子ども家庭センターの設置を推進する背景にある 「切れ目のない包括支援」の意義と、ホームスタートが「すべての子育て中の親と子どものため」の活動であるという原点に言及し、今後、日本のホームスタートは妊娠期から学齢期までを対象としてゆくことへの意義を力説しました。
総会の3週間前、5月9日付けで東京都から認定を受けることができ、「認定NPO法人ホームスタート・ジャパン」として初の総会を迎えました。
冒頭の森田圭子代表理事の挨拶では、認定NPO法人取得と1月から3月のクラウドファンディングの目標達成のために、多くの皆さまからご寄付や広報協力など、さまざまな形で応援をいただいたことに対して感謝の気持ちが述べられました。ホームスタートが目指す「ビジョン」を3年前の総会でみんなで議論し改めて決めたことを振り返り、「すべての子ども」に幸せなスタートを届けるために、一緒に進んでいきたいという言葉がありました。
その後、令和6年度の事業と決算の報告、令和7年度の事業計画と予算案の説明や、各種の報告事項などがあり、2時間弱の総会は終わりました。
ホームスタートの活動には、親子に寄り添うホームビジター(訪問ボランティア)さんの存在が不可欠です。また、訪問する側も安心して活動できるように、ホームビジター養成講座の修了が活動参加の必須条件となっています。従来の養成講座は、合計37時間のボリュームでしたが、昨今では働きながらボランティアをする人たちも増えており、より参加しやすい形態の養成講座へ改良することが求められてきました。
そうした背景から、講座のカリキュラムやシラバスを見直し、各地での試行を重ね、講座の質は担保しつつ約4割も短縮した改訂版のホームビジター養成講座カリキュラムができあがりました。
第五部では、カリキュラム改定に携わったプロジェクト・メンバー(オーガナイザー有志)が講師となり、改訂ポイントや新たな演習の進め方について解説しました。
協働の体験ワークでは、折り紙を使ったバージョンを紹介。一緒に手を動かしながら会話を進める中で、一方的に「教える」のではなく、一緒にやってみる「協働」の楽しさと新たな気づきを実感することできるワークです。
ホームスタートの講座は、楽しく、そして、一緒に学ぶスタイルがたくさんあります。講師陣の信頼関係とフレンドシップを大切にした雰囲気づくりは、今回の研修でも満載でした。
盛りだくさんの全国交流会は2日目の15時過ぎに終了。
自治体や保健師さんとの連携強化、利用申し込みのデジタルツール導入、産前から学齢期まで活動領域の拡大、ボランティア養成講座を短縮することでボランティアさんを増やすことと、大事なテーマが並びました。
すべてが一気に進むわけではないと思いますが、着実に進化し、活動を広げていきたいとあらためて感じました。